提案スキル(writing-proposals)を磨いた過程

社内のDX推進を動かす提案を、AIとの対話で「配布されたまま」から「相手に刺さる最終形」まで仕上げた記録

1. 想定した相手と、変えたいこと
提案者役員(社内DX推進の旗振り役)
変えたいことITリテラシー不足で止まっている社内のDXを動かす。第一歩としてAIを業務で使い始めてもらう
届ける相手当初は社長(承認者)→ 途中で各部署のリーダー(3部署)に変更
相手の頭の中の問い社長「なぜ今なのか」/リーダー「資料を作る時間もない、スキルもない」
2. Before → 3. After(同じスキル・磨いたのは渡す材料)
チューニング前:配布されたままのスキルで一発目宛先:社長 お願い:研修の承認
【提案】社員向けのIT・AIリテラシー勉強会を、来月から月1回・1時間、3ヶ月間の試験開催として承認してください。 講師は私が務め、無料ツールを使うため追加費用はかかりません。必要なのは参加者の月1時間だけです。 ◎ 現状の課題(現に起きていること) ・会議の議事録が作成されず、決定事項をあとから確認できないことがある ・手書きの業務が残り、同じ情報を複数の場所に書き写している ・情報の置き場所が人によって異なり、必要な情報を探すのに時間がかかっている ・業務ツールを使いこなせる社員がおらず、改善の相談をしても前提知識の差で話が進まない ◎ なぜ今なのか ・これまでのやり方は、お互いに目の届く範囲では十分に機能してきました ・一方、生成AIの普及で仕事の進め方が世の中全体で変わり始めており、基礎知識のある会社とない会社の差はこれから年々広がります ・リテラシーは一朝一夕には身につかないため、必要に迫られてから始めると間に合いません。小さく始めるなら、費用も影響も最小の今が一番低コストです ◎ 提案する内容 ・月1回・1時間の社内勉強会を3ヶ月間、試験的に開催する ・講師は私が務め、教材は無料ツールを使うため追加費用はゼロ ・テーマは現場の困りごとに直結するものから始める(例:会議の記録をAIで残す方法、情報の置き場所のそろえ方、AIでの文章作成) ◎ リスクと対策 ・「面倒」「今のやり方でいい」という声も想定されます。業務のやり方の変更は強制せず、まず触って体験してもらう場とします ・3ヶ月後に参加状況と現場の変化をご報告し、続けるかどうかは社長にご判断いただきたいです
チューニング後:材料を磨いたスキルで一発出し宛先:3部署のリーダー お願い:仕事を1つ預けるだけ
【お願い】3部署それぞれで「一番面倒な仕事」を1つだけ、私に預けてください。 私がAIを使って片付けて、結果だけをお見せします。皆さんがやることは、預けることだけです。 ◎ なぜこんなお願いをするのか ・先日お伝えしたとおり、大手ではAIを使った仕事が当たり前になり始めています。  地元がまだ横並びの今のうちに、うちも一歩目を踏み出したいと考えています ・ただ、「時間もないしスキルもない」という状況で、皆さんに新しいことを覚えてくれとは言いません。  まず、AIが本当に使えるのかどうか、皆さん自身の仕事で確かめてもらうのが一番早いと考えました ・うちは3部署なので、全部署で同時に試せます。結果を並べて見れば、どの仕事に効くかもはっきりします ◎ 預けてほしい仕事の例 ・手書きの書類を、きれいな資料に起こす仕事 ・会議の記録をまとめる仕事 ・人に説明する資料を作る仕事 ・同じ情報をあちこちに書き写している仕事 (迷ったら「これが一番時間を取られている」というものをそのまま持ってきてください) ◎ 進め方 ・各部署から1件ずつ、合計3件を預けてください ・預かった仕事を、私がAIで処理して、結果を皆さんに見てもらいます ・使えると思えば続ける、使えないと思えばそこで終わり。判断は皆さんに任せます ・期間は1ヶ月。皆さんの作業も、費用も、一切発生しません ◎ 正直に伝えておきたいこと ・AIは万能ではありません。3件のうち、うまくいかないものもあると思います ・うまくいかなかったものは、そのまま「うまくいかなかった」と報告します。  その見極めも含めて、確かめる1ヶ月にさせてください
チューニングの過程(5回の出し直し)
1
初版:社長向け・研修の承認依頼 スキルの対話(1問ずつ・推奨案つき)に沿って出力。形は整ったが、まだ一般論寄り
材料:①研修 ②社長 ③「なぜ今」④現場のエピソード(議事録・手書き・情報散在)
2
危機感の注入 「他社との差が開く一方という危機感を」の指示で、「差は加速して開く/追う側は数年分の学び直し/今がほぼゼロコストの最後の時期」の三段構成に
3
事実と見立ての分離 「同業が進んでいるかは正直分からない」と申告 → 嘘を書かず「大手は事実・地元は見立て」に分け、横並び=先行チャンスに反転。危機感はむしろ強くなった
4
相手の変更:社長 → リーダー 承認依頼をやめ「危機感の共有+意見を聞かせて」に縮小。現状課題が「あなたたちのせい」に聞こえないよう、問題を人でなく状況に帰属
5
最終形:懐疑層に合わせて「預けるだけ」に 「AIに懐疑的な人に一番効く方法は?」の問いから、説得をやめて本人の仕事で見せる形へ。お願いを「一番面倒な仕事を1つ預ける」まで削り、失敗も報告すると先に宣言
4. 工夫したポイントと苦戦したポイント

工夫したポイント

  • スキル本体(SKILL.md)は書き換えず、対話で渡す上流(誰に・相手の問い・正直な見立て)を磨いた。同じスキルでも入力の質で出力が別物になる
  • 「分からないことは分からない」と正直に渡した。AIが「事実」と「見立て」を書き分けてくれて、突っ込まれても崩れない提案になった
  • 相手の懸念(時間もスキルもない)を先に予想して渡した。原稿では言われる前に先出しして answer する構成に変換された
  • 盛りたくなる表現(「ほぼ全ての業務を改善できる」)は、AI側の提案で具体例2つに絞った。大きく言うより疑われない

苦戦したポイント

  • 届ける相手が途中で変わった(社長→リーダー)。お願いの中身から書き直しになった。相手を最初に固めるのが一番の時短だった
  • 「実際に見た場面」を聞かれてもすぐ出てこなかった。エピソードの代わりに身近なたとえ(洗濯機)で補うことになった
  • 数字の根拠が用意できず、エピソード頼みに。「議事録がなくて確認に◯分」のような数字が1つあれば、もっと強くなった
  • 出し直しは計5回。ただし手直しではなく「材料を足して一発出し直し」の繰り返しで、文章の一貫性は保たれた